清掃の目的は「見た目をキレイに保つ」以外に、二つの目的があります。
どちらも溜まった汚れが原因になることが多いのです。
これをおろそかにすることは、利用者の方や従業員の方にとって大変危険です。
大きなトラブルに繋がってしまうことも少なくありません。
皆さんもお悩みだと思いますが、浴場にはたくさんの汚れがあります。
例えば、
浴場でよく見かける汚れの一例です。
これら複数の汚れが層になり、汚れのコーティングを作ってしまいます。
タイルや石材の表面にミルフィーユ状に固まってしまうため、落ちにくく、滑りやすいのです。
これらを除去するためには「複数の洗剤」を使い分け、「複数の汚れ」を一層ずつ薄皮を剥がすように洗浄しなければなりません。
さらに汚れには「レベル」があります。
汚れの度合いが高くなると、レベルも高くなります。
家庭でもよく見かけるものを例にあげると、
レベル1:付着
(ホコリが溜まっている)
レベル2:吸着
(カップの飲み残しが蒸発して色が残っている)
レベル3:粘着
(コンロ周りに油がこびり付いてガチガチに固まっている)
レベル4:染着
(汚れが素材内部まで染み込んでシミになっている)
これらの汚れは家庭内だけでなく、浴場施設でも頻繁に見受けられます。
脂や垢がこびり付いてガチガチに固まっていたり、汚れがタイル素材にまで染み込んでいたり。
さきほどの「汚れの層」もそうですが、「汚れのレベル」も厄介で、レベル4に近づくほど除去するのが難しくなります。
同じ洗浄工程を3回、4回と繰り返さないと汚れが落ちません。
さらに洗剤も数種類使わなければならないので、時間もコストもかかってしまうのです。
一番大切なこと、それは「汚れが蓄積する前にキレイにすること」です。
年に数回、汚れがひどくなってから清掃業者に依頼するとしてもコストも時間もかかります。
汚れがレベル4の「染着」までになると、プロでも100%除去することは保証できません。
日々の清掃で汚れを早期段階で除去することで、コスト・時間・安全などたくさんのメリットが生じます。
しかし、「毎日清掃しているのに汚れが蓄積し続けている」なんてことありませんか?
それには理由があります。
①「汚れを落とすことのできない洗剤を使っているから」
そして
②「しっかりブラッシングしていないから」
この二つをきちんとすることで適切な清掃ができます。
「汚れ」と「洗剤」の関係は、「ドライバー」と「ネジ」の関係と似ています。
マイナスのネジをプラスのドライバーでは外せないように、汚れと洗剤にもそれぞれ相性があります。
つまり、「1種類の洗剤で全ての汚れを落とすことはできない」ということです。
お風呂で身体を洗う時も、髪にはシャンプー、顔にはメイク落としや洗顔料、体にはボディーソープなど、部位や汚れによって何種類も使い分けると思います。
浴場の汚れも同じで、汚れや素材、状態によって洗剤を使い分けることが重要です。
家庭用洗剤や名前だけの業務用洗剤はレベル2の「吸着」までは汚れを落とすことができますが、レベル3以上の汚れを落とすことは困難です。
しかしプロ用の浴場専用洗剤を使うと、簡単に短時間でキレイにできます。
石鹸カスや人の体から出る皮脂や垢などは「酸性の汚れ」です。
カルキや水アカなどは「アルカリ性の汚れ」です。
「酸性の汚れ」には【アルカリ性の洗剤】、「アルカリ性の汚れ」には【酸性の洗剤】を使います。
【酸性の洗剤】
浴場の床(基本的には床全体に「水アカ・カルキ用の洗剤」を使います。)
【アルカリ性の洗剤】
洗い場のシャンプー・石鹸カス汚れ
【アルカリ性の洗剤】
脱衣所から浴場に出てすぐの床の足裏の皮脂汚れ
【アルカリ性の洗剤】
人が頻繁に行き来する通路の皮脂・垢汚れ
【鏡・蛇口の水アカ汚れ】
どちらの洗剤でも落とすことができないので専用の洗剤を使います。
※「エフロ」は工具と薬品で除去するので、プロに任せましょう。
汚れと洗剤で性質の異なった成分が化学反応を起こし、中和することで汚れが落ちるのです。
大まかに分けるとこのようになりますが、浴場専用のプロ用洗剤を使うとより簡単にキレイに汚れが落とせます。
ブラッシングの重要性を知っていただくために、浴場専用の洗剤を使用した洗浄工程を簡単にご紹介します。
①水養生
洗浄する箇所を水で濡らす。
②洗剤の希釈
プロ用洗剤は強力なので、汚れの程度に合わせて水で希釈し薄める。
③洗剤の塗布
洗浄箇所に洗剤を塗る。
④放置
汚れと洗剤を反応させるためにしばらく放置する。
⑤ブラッシング
ここです。ここが大事です。
ムラが無いように「縦こすり」と「横こすり」を組み合わせてこする。
一方向だけでなく、多方向からブラッシングすることで、より汚れが落ちやすくなります。
洗剤の力だけではなく、この工程があることによって洗浄力が向上するのです。
「浴場をキレイに保つ」で記載しましたが、普段の日々の清掃でも多方向からしっかりとブラッシングすることによって汚れの蓄積を防ぐことができます。
床面など、ある程度面積が広い場合は、ポリッシャーを導入することをおすすめします。
ポリッシャーとは、モーターで円形のブラシやパッドを回転させて効率良く床の洗浄を行なう清掃機械です。 床面に凹凸がある場合はブラシ、平坦な場合はパッドというように付け替えることができ、広い場所ははポリッシャーで入り組んだ場所はデッキブラシで洗浄すると効率よく作業ができます。